
1985年8月、群馬県の御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機の事故を追う地方新聞社を舞台にした群像劇。事故そのものや新聞社の内部事情、全国紙と地方紙の違いといったドラマの背景への突っ込み、過去と現在の描き方、人物描写のどれもが唐突で脈絡がなく説明不足の感は否めない。その割りに、不必要と思われるカットや意味不明のカメラの動きなどが多いので、見ているこちらはなんとも落ち着かない気分になる。

ところで、これは恐らく監督・脚色の原田眞人の趣味だろうが、堤真一演じる主人公の悠木が新聞記者になるきっかけを作った映画として、カーク・ダグラス主演、ビリー・ワイルダー監督の『地獄の英雄』を話題にするところはちょっと面白かった。
『地獄の英雄』のカーク扮する主人公の新聞記者は、洞窟の落盤事故による生き埋め事件を取材する。何としてもスクープを手にしたい彼は、記事を大げさにねつ造するが、それを読んだ人々が事故現場に集まりお祭り騒ぎとなる。だから原題は「The Big Carnival」となる。もちろん悠木が憧れたのは、カークの方ではなくて、常に「記事に対するダブルチェック」を口にする編集長の方だったのだが。
ところが『地獄の英雄』にはもう一つ「Ace In The Hole」という原題が存在する。直訳すれば穴の中のエースとなり、生き埋め事件そのものを指すようにも思われるが、エースにはトランプのエースの意味もある。これが事故で死んだ悠木の部下が御巣鷹山から持ち帰った遺品と重なる。悠木は「Ace In The Hole」を“最後の切り札”と訳したが、このことと先の編集長のダブルチェックの言葉がラストの彼の決断へとつながっていく。と、この映画は、『地獄の英雄』の2つの原題の意味を巧みに取り入れていたのだ。